【重要作品】J・ハイドン:弦楽四重奏曲第77番「皇帝」

ヨーゼフ・ハイドンが自らの交響曲創作の最後を締めくくる傑作交響曲集「ザロモン・セット」を書き上げたのは、1791年から1795年の間の2度に渡るイギリス楽旅の時期です。すでにモーツァルトはこの世にはなく、ベートーヴェンはこれからいよいよウィーンでの活動を本格化させる時期。しかし、老ハイドンの長い人生には、まだ2つの大きな仕事が残されていました。1つがヘンデルを受け継ぐオラトリオであり、もう1つがハイドン自身の創作の過程がそのままジャンルの確立の歴史でもある弦楽四重奏曲の集大成です。こうして生み出されたのが、1797年に完成した全6曲からなる「エルデーディ四重奏曲」であり、ここにおいて弦楽四重奏曲の古典派様式はついに完成に至るのです。

エルデーディ四重奏曲の6曲はいずれ劣らぬ傑作ぞろいですが、知名度でいえば第3曲目の<弦楽四重奏曲第77番「皇帝」>ということになるでしょう。堂々とした佇まいとソナタ形式による緊密な書法が光る第1楽章、ハイドン自身が作曲した当時のオーストラリア国歌の旋律を用いたことにより曲のニックネームの由来にもなった変奏曲形式による第2楽章、ユーモラスな音型が特徴的な第3楽章、劇的な緊張感に貫かれた第4楽章、いずれの楽章もハイドンが晩年にたどり着いた弦楽四重奏曲の奥義とも言うべき境地です。
こうしてハイドンによって様式が確立された弦楽四重奏曲は、室内楽の中で最も高い芸術性が要求されるジャンルとして広く認められることとなり、このエルデーディ四重奏曲から数年後には、慎重に慎重を重ねたうえで作曲されたベートーヴェンの最初の弦楽四重奏曲が発表されることになるのです。

【参考音源】

ファーストチョイスとしては、クイケン兄弟を中心としたオリジナル楽器によるクイケン四重奏団によるものをとります。オリジナル楽器特有のナチュラルで透明感のある音色、推進力を保ちつつも中庸を得たテンポ感、正統的な楽曲解釈、どこを取ってもスタンダードと呼ぶにふさわしい、グレードの高い演奏です。そして何より、4人の奏者がまるで親しげに会話を楽しんでいるような親密なアンサンブルが、室内楽の本質を捉えています。



セカンドチョイスには、イタリア四重奏団による演奏を挙げます。その名の通りイタリアの団体らしくラテン的な感性と明るい音色が特色となっており、その屈託のなさが魅力的な演奏です。早めのテンポでグイグイ弾き進めていくスタイルであり、特に最終楽章の盛り上げ方は、聴いていて興奮を感じるほどです。

posted by バニラ at 01:13 | TrackBack(0) | 重要作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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